今回は、「第17次ものづくり補助金以降の新制度」についてになります。
2023年12月6日に、令和5年度補正予算による、第17次のものづくり補助金以降の新制度について詳細の情報が公開されましたので、新制度の変更点を中心にお伝えします。
【令和5年度補正予算:令和5年度ものづくり・商業・サービス補助金の概要について】
令和5年度ものづくり・商業・サービス補助金の概要について
【ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の概要(R5年度補正予算)】
〇雇用の多くを占める中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援。
令和5年度補正予算においては下記の見直し・拡充等を実施。
➀「省力化(オーダーメイド)枠」を新設し、補助上限額を大幅に引き上げ、省力化投資を重点支援
➁現行の枠を見直し、「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」に整理統合するとともに、今後成長が見込まれる分野(DX・GX)は通常枠よりも補助上限額・補助率を引き上げることで支援を重点化
【ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の主な変更点】
※新制度による公募は、令和5 年度補正予算を基に17次公募より開始することとなっています。
大きく、以下の1つの項目が変更点となります。16次公募までと17次公募以降とで大きく制度が変更となっています。
1.省力化(オーダーメイド)枠の新設
・中小企業・小規模事業者が人手不足の解消等を目的とした、生産プロセス等の省力化の取り組みを進めるため、個々の事業者のビジネスプロセスに応じたオーダーメイド型の省力化投資等を補助上限額を大幅に引き上げて支援。
2.製品・サービス高付加価値化枠の新設等
・中小企業・小規模事業者が、付加価値の高い革新的な製品・サービスの開発に取り組むために必要な設備投資等を支援。
・今後成長が見込まれる分野(DX・GX)は成長分野進出類型とし、通常類型よりも補助上限額・補助率において重点支援。
・コロナからの回復を図りつつ、最低賃金の引き上げにも取り組む事業者を通常類型よりも補助率を引き上げて支援。
・グローバル枠については、引き続き、海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備投資等を支援。
3.大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充
・持続的な賃上げを実現するため、大幅な賃上げに取り組む事業者について、補助上限額を引き上げる (新型コロナ回復加速化特例適用事業者を除く)。
・省力化(オーダーメイド)枠においては、上乗せ額を拡充し、最大2,000 万円まで補助上限を引き上げる。
4.その他
・交付候補者決定前において、一定の投資規模の事業計画に取り組む事業者に対して、口頭審査を導入。
・令和5年度補正予算を基に行う公募の補助事業実施期間は令和6年12月10日まで (令和6年12月10日までに実績報告まで完了する必要があります。延長はできませんのでご注意ください)。
・厚労省の産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)との連携。
以上が、新制度の変更点となりますが、詳細とコメントを以下の通り見ていきます。
1.省力化(オーダーメイド)枠の新設
〇補助上限額・補助率
→大幅賃上げをすると()の内の通りで補助上限額が増えます。
16次までの通常枠との違いとしては、補助上限額が従業員6~20人が1,000万円→1,500万円(2,000万円)、21人以上1,250万円→21~50人3,000万円(4,000万円)、51~99人5,000万円(6,500万円)、100人以上8,000万円(1億円)と大幅に補助金の上限額が多くなっています。
1/2、小規模・再生2/3の補助率は、16次までの通常枠と同様の補助率です。
ただし、補助金額が 1,500 万円までのものは 1/2 以内 、 1,500 万円を 超える部分は 1/3 以内となります。
〇対象事業
人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備))の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援
デジタル技術とは AI 、ロボット、センサー等をいう。
ロボット単体の導入ではなく、外部のシステムインテグレータ( Sier )との連携などによりロボットシステム等を構築したものをいう。
→デジタル技術を活用した専用設備、ロボットシステム等を構築したものに対する補助金なのかどうかを見極める必要があります。
〇活用イメージ
例)熟練技術者が手作業で行っていた組立工程に、システムインテグレータ(SIer )と共同で開発した AI や画像判別技術を用いた自動組立ロボットを導入し、完全自動化・ 24 時間操業を実現。組立工程における生産性が向上するとともに、熟練技術者は付加価値の高い業務に従事することが可能となった。
→AI画像判別技術を用いた自動組み立てロボットなどで、生産性向上と付加価値が高まること。主に、製造業を対象とした内容ということが分かります。
2.製品・サービス高付加価値化枠の新設等<➀通常類型>
〇対象事業
・革新的な製品・サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援
〇活用イメージ
例)最新複合加工機を導入し、精密加工が可能となり国際基準に準拠した部品を開発。
→16次までの通常枠との変更点は、新型コロナ回復加速化特例が適用になると補助率が2/3に引き上げとなることです。
回復型賃上げ・雇用拡大枠がなくなり、その後継として新型コロナ回復加速化特例が登場したものだと思います。
適用対象の詳細については、今後公募開始後に分かってくると思います。
2.製品・サービス高付加価値化枠の新設等<②成長分野進出類型(DX・GX)>
〇対象事業
今後成長が見込まれる分野(DX ・ GX )に資する革新的な製品・サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援
※革新的な製品・サービス開発とは、顧客に新たな価値を提供することを目的に、導入した設備・システムを用いて、自社の技術力等を活かして製品・サービスを開発することをいう。
単に設備・システムを導入するにとどまり、製品・サービスの開発を伴わないものは該当しない。
〇活用イメージ
例)AI やセンサー等を活用した高精度な自律走行搬送ロボットの試作機を開発
→16次まであったデジタル枠・グリーン枠が一つにまとめられ、大きな変更点は、補助上限額が大きくなっていることです。
従業員5人以下が750万円→1,000万円(1,100万円)、6~20人が1,000万円→1,500万円(1,750万円)、21人以上1,250万円→2,500万円(3,500万円)と多くなっています。
補助率は一律2/3以内と他の枠と比較すると大きいです。
過去の回ではデジタル枠とグリーン枠の採択率が高い傾向にあったので、この後継とも言える、成長分野進出類型(DX・GX)が申請上有利な枠だと考えられます。
なお、申請する上での条件などは、公募開始と共にその詳細が分かってくると思います。
2.製品・サービス高付加価値化枠の新設等<③グローバル枠>
〇対象事業
海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援
※海外事業とは、海外直接投資、輸出、インバウンド、海外企業との共同事業をいう。
〇活用イメージ
例)海外市場獲得のため、新たな製造機械を導入し新製品の開発を行うとともに、海外展示会に出展
→グリーバル市場開拓枠との違いは、現在の情報だけで見受けられない状況です。
3.大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充
・持続的な賃上げを実現するため、大幅な賃上げに取り組む事業者に対して、従業員規模に応じて補助上限額を100 万円~ 2,000 万円引き上げ。
・事業計画において、補助事業期間終了後3~5年で「①給与支給総額 年平均成長率 6 %以上増加」かつ「②事業場内最低賃金を 地域別最低賃金+50円以上の水準」を満たしたうえで、「③毎年、事業場内最低賃金を+50円以上増額」することとし、賃上げに係る計画書を提出することが要件。
・要件未達の場合、補助金上乗せ分について全額返還。
→16次までの大幅賃上げの要件との変更としては、➀補助重減額が申請枠に応じて大きくなっていること、②事業場内最低賃金が+45円から+50円に増額金額が上がったことです。
【補助上限引き上げ額】
→製品・サービス高付加価値化枠(通常類型、成長分野進出類型)とグローバル枠については、16次まどと同様の補助上限額です。
4.その他
(1)一定の投資規模がある事業者について、口頭審査を実施
・補助申請額が一定規模以上の申請を行う事業者においては、交付候補者決定前にオンラインによる口頭審査 を実施。
・例えば、当該事業申請にかかる意思決定の背景や事業実施に際しての事前のマーケティングの調査等、計画書に記載のない内容についても質問を行う可能性がある。
→一定の投資規模というその金額の詳細次第になってくると思います。1億円以上などといった、大きな設備投資の場合を想定しているように感じます。
(2)令和5年度補正予算に基づく公募は2回程度を予定、補助事業実施期間は令和6年12月10日まで
・令和5年度補正予算に基づく公募は2回程度実施予定。
・補助事業実施期間は、いずれの公募回においても令和6年12月10日まで(令和6年12月10日までに実績報告まで完了する必要があります。延長はできませんのでご注意ください)。
→実施回数が2回程度実施と少ないです。17次を含めて2回程度の実施となります。
また、16次締切より、補助事業完了期限、実績報告の完了期限が、令和6年12月10日までとなっています。
令和5年度の17次、令和6年度の18次までの3回の実績報告の完了期限が同様に、令和6年12月10日までとなります。
16次締切の採択発表は1月下旬頃となっており、16次であれば約10ヶ月間の猶予がありますが、今までの3カ月に1度の公募のスケジュール感だと17次以降は7ヶ月間、18次ヶ月間だとほぼ事業実施の期間がなく、かなりタイトなスケジュールになることが予想できます。
補助事業完了期限からの想定としては、令和6年度の上期で公募しないと事業実施まで間に合う事業が限られていると感じます。
どちらにせよ、申請を検討されている事業者の方にとっては、かなりタイトなスケジュールになりました。
(3)厚生労働省の産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)との連携
・ものづくり補助金の「製品・サービス高付加価値化枠」で交付決定を受けた中小企業等に対し、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた中小事業主等が生産性向上等に必要な新たな人材を雇入れた場合に、当該事業主に対し、当該人材に係る賃金の一部を助成する 「産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)」との連携を実施。2023年11月29日に制度が創設されています。
産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)
→第10回公募以降の事業再構築補助金の交付決定者を対象とした産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)という制度がありますが、その制度と助成金の金額以外は内容が類似しております。
ものづくり補助金を活用して事業を実施するにあたり、新規に雇用した労働者が必要な場合で、1年間に350万円以上の賃金が支払われる者を対象に最大5名まで250万円/人、助成される制度です。
事業再構築補助金の場合280万円/人なので、30万円の金額差はありますが、この制度の活用により、補助金と助成金の全体で鑑みた場合、事業を実施する上で大きな資金援助となることは間違いないです。
以上、新制度の概要となりますが、今後公募開始と共に、各枠の申請要件や加点項目の詳細が分かってきますので、改めて投稿していきます。
また、17次以降は実績報告の期限が令和6年12月10日までを縛りとされているので、早期に申請をした方が有利なことは間違えないでしょう。
ものづくり補助金の申請サポート
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特にものづくり補助金では、採択されるための加点の申請項目が複数あり、十分な準備期間を設けて進められることが望ましいです。
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ものづくり補助金の申請をご検討の方は、是非お問い合わせいただければと思います。