今回は、「【2024年6月最新】ものづくり補助金 採択後の流れ」についてになります。
ものづくり補助金は、これまでに全18回の公募があり、先月(2024年5月20日)に17次の採択発表がありました。令和5年度補正予算については、第17次、第18次のものづくり補助金の公募があり、直近の第18次については申請〆切が終わり、2024年6月11日現在採択発表前の状況で、採択発表は6月下旬予定となっています。
公式サイトのグラフでは1次~16次までの採択結果についてまとめられています。結果は採択率29%(応募者数629件、採択者数185件)でした。17次は応募枠が省力化(オーダーメイド)枠のみと限定されていたため、応募者数が低迷しましたが、採択率29%は過去最低水準です。一体18次はどうなるでしょうか?今月下旬の採択結果が待たれます。
さて、ものづくり補助金では、採択後も複数の工程をクリアする必要があり、すぐには入金されません。今回は、「採択後に必要な手続き」について詳しく解説します。採択発表済みの16次、17次だけでなく、もうすぐ採択発表が予定されている18次に応募した事業者の皆様や今後申請を検討される方にとって有益な内容となっています。
目次
本日のポイント
- 採択後にも様々な書類提出と詳細な審査が続く
- 補助事業は事業者の支出で実施し、補助金は後から入金
- 事業実施および補助金受け取りには期限がある
- 補助金を受け取った後は5年間の「事業化状況報告」
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金は、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。2013年に「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」という名前で始まり、以降名前を変えながら毎年継続して実施されています。
なお直近で公募された18次については、以下のブログ記事とYouTube動画にて解説しています。
第18次ものづくり補助の概要の動画投稿!~最終回では〇〇が重要!~
ものづくり補助金の全体の流れ
まず、ものづくり補助金の申請から事業終了までの流れを確認しましょう。
上画像のスケジュールは18次公募のものですが、16次~18次までは赤字の実績報告と補助金請求期限は共通となっています。すなわち、実績報告期限は2024年12月10日、補助金請求期限は2025年1月31日と特に第18次公募の採択者の事業者にとってはかなり短い期間しかないスケジュールとなっています。
ものづくり補助金のおおまかな流れは、以下のとおりです。
主な工程 |
概要 |
① 応募申請 |
公募要項をよく確認し、事業計画書の作成や必要書類を揃えて電子システムより申請します。 |
② 採択発表 |
公募期間終了後、3か月程度の審査期間を経て補助金交付候補者が採択されます。申請した全ての事業者に対して事務局から通知が届くため確認しましょう。事業再構築補助金公式サイトの「採択結果」ページで、事業者名や事業計画名、計画の概要が公表されますので、そちらからも確認できます。 |
③ 交付申請 |
「交付申請」は採択された事業者が補助金を受け取るために行う手続きです。追加提出する書類等を基に、事業内容や補助対象経費の精査な審査が行われます。 |
④ 補助事業実施 |
交付申請で提出された書類を事務局で審査し、内容に問題がなければ、事務局で交付決定手続きが行われます。交付決定日以降、提出した事業計画書に沿って補助事業を開始してください。補助事業期間中、事務局担当者が補助事業実施場所を訪問し、物品の入手・支払・補助事業の進捗状況を確認する場合があります。実施する場合の時期は、補助事業の進捗状況等によります。(中間監査) |
⑤ 実績報告 |
補助事業完了後、実績報告書および証拠書類の提出を基本30日以内に行います。提出期限に間に合わない場合は交付決定取消となります。「実績報告書」の内容に基づき書類を検査し、機械設備等の入手・支払、補助事業の成果等を実際に確認するため、必要に応じて事務局が事業実施場所を訪問します。(確定検査) |
⑥ 精算払請求 |
実績報告や確定検査の内容に問題がなければ、事務局から「補助金確定通知書」が交付されます。通知された補助金額に基づき「精算払請求書」を作成し、提出します。「精算払請求書」受領後、全国中央会より補助金額の振込みを行います。 |
⑦ 事業化状況報告 |
補助事業終了後5年間、補助事業の成果の事業化状況等について、「事業化状況・知的財産権等報告書」及び「事業化状況等の実態把握調査票」を提出する義務があります |
採択後の手続きを詳しく
今回は②採択発表後の手続きについて詳説します。
➁採択発表
15次公募以降、応募申請し「採択」された事業者は「補助金交付候補者」と呼称されるようになりました。
「補助金交付候補者」とは平たく説明すると、「事業計画の内容が評価され、補助金の交付申請を行う資格を手に入れた者」です。従って、“採択”によって申請した補助金満額が確定した訳ではないことに注意が必要です。
③交付申請
交付申請に際してはまず、公式サイトに掲載される「交付申請(説明動画)」を確認しましょう。
交付申請では、補助事業に要する経費を確定させます。そのため見積依頼書や見積書(相見積書も)など必要な書類を全て準備し、提出します。この際、「交付申請時に有効な見積書」であることが必要ですが、交付決定後の発注に際しては「発注時に有効な見積書」を取得する必要があります。二度手間になることを避けるため、見積書の有効期限は長めに設定してもらうよう見積先に依頼しましょう。
ものづくり補助金では、事業者からの各種申請受付・照会等を行う統一窓口として、「ものづくり補助金サポートセンター」を設置するととともに、補助事業者の事業実施に必要な個別対応を行う窓口として、各都道府県に「地域事務局」を設置しています。通常、補助金交付候補者にはそれぞれの本社所在の都道府県に設置された「地域事務局」より担当員がつきます。担当する地域事務局により交付申請前に申請書類を担当員に確認してもらう必要があるなど、ローカルルールがある場合がありますので、担当員の指示に従ってください。
交付申請で提出された書類を事務局で審査し、内容に問題がなければ、事務局で交付決定手続きが行わられ、「交付決定通知書」が発行されます。「交付決定通知書」右上に記載された交付決定日より、補助事業を開始することができます。通常は、数回の差戻し修正を経て初回交付申請後1~2か月程度で交付決定に至りますが、経費項目の多い事業の場合などは交付決定までに長期化する傾向にあります。
16次・17次・18次共に今回の実績報告書間提出期限は2024年12月10日となりますので、遅くとも当該期限の3か月前(9月初)までに申請手続きを完了する必要があります。交付申請手続きは速やかに行いましょう。
④補助事業実施
交付決定後は補助事業を実施します。交付決定時に承認された見積に合わせて、契約・申込、納品、検収、支払といった補助事業の完了までを期間内に行います。交付決定日以前の契約・発注、実施期限までの納品及び支払いの未完了は、補助対象外となり減額または取消になるのでご注意ください。
16次・17次・18次ではいずれも次のステップである実績報告の期限が2024年12月10日となっており、補助事業実施期間の延長は一切認められません。
また、補助事業期間中または実績報告時に事務局担当者が補助事業実施場所を訪問し、物品の入手・支払・補助事業の進捗状況を確認する場合があります。実施する場合の時期は、補助事業の進捗状況等によりますが、設備導入後、代金支払い後であることが多いようです。通常、事前に事務局より連絡入ります。なお、補助事業期間中の場合「中間監査」、実績報告時の場合「確定検査」と言います。「補助金交付決定通知書」で認められた経費であっても補助事業以外に支出したものや、機械装置等で補助事業以外の用途と共用した物件は補助対象になりませんが、この中間監査や確定検査により対象外と判断される場合もありますのでご注意ください。
➄実績報告
16次・17次・18次に共通して、補助事業が完了した日から30日以内、または2024年12月10日のいずれかの早い日までに、実績報告を完了しなくてはいけません。
実績報告を申請する前にまず、補助事業で支出した経費の発注書、納品書、請求書、支払証憑、出納帳その他本事業に係るすべての経理証拠書類の写しや納入設備の写真など多岐に渡る実績報告書類を担当する地方事務局に確認してもらう必要があります。地方事務局、担当員、また事業内容によって要求される内容が異なり、何度も差戻しが発生することがあります。担当員チェックを経て、かつ2024年12月10日までに実績報告を完了させる必要があるため、必要書類は補助事業実施中から収集・整理・保管し、事業を完了した後は、速やかに実績報告手続きに進みましょう。
なお実績報告に際しても、公式サイトに「実績報告から補助金の受取りまでに関する説明動画」が公開されていますのでご参照ください。
「実績報告書」の内容及び確定検査の結果、内容に問題がなければ補助金額が確定し、「補助金確定通知書」が事務局より通知されます。
➅概算払請求
16次・17次・18次ともに、精算払請求の提出期限は2025年1月31日です。
「補助金確定通知書」を受領後、「補助金精算払請求書」により、精算払の請求を行ってください。ただし、精算払の請求は、必要に応じて実施する補助事業の確定検査(精査)を受け、かつ、補助金額の確定後でなければ行うことができません。精算払請求書を受領後、全国中央会より当該補助事業者宛に補助金額の振込みを行います。
➆事業化状況報告
全ての補助事業者は、補助事業終了後、6年間にわたり、以下の内容を報告する必要があります。
- 「事業化状況・知的財産権等報告書」
- 「事業化状況等の実態把握調査票」
- 「返還計算シート」
- 直近の決算書(知的財産権の報告は、交付決定から報告対象年度終了時点までの決算書をいう。)
- 報告年3月分の賃金台帳
報告スケジュールは下記の通りです。
事業回状況報告についても、他と同様に公式サイトで説明動画が公開されています。
なお、補助事業によって収益が生じたことが確認されたときは、受領した補助金額を上限として収益納付をしなければなりません。ただし、事業化状況等報告の該当年度の決算が赤字の場合や十分な賃上げ(年平均成長率3%以上給与支給総額を増加させた場合や最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にした場合等)によって公益に相当程度貢献した場合は免除されます。
補助金入金までの期間
既に補助事業を開始し、完了の目途が立っている事業者の場合、補助事業完了後30日以内に実績報告を完了させ、その後精算払請求を経て、補助事業完了後2か月以内に入金されるでしょう。16次・17次・18次ともに期限ぎりぎりになった場合、精算払請求の提出期限は2025年1月31日ですから、2025年2月中には入金される見込みです。
補助事業実施中には事業者自身が支出して事業実施する必要があり、補助金の入金は支出の数か月先になります。実現性の高い資金計画は応募申請時の審査項目でも重要なポイントです。事業計画書を作成する段階でゆとりをもった資金調達計画を策定し、必要に応じて早めに金融機関に相談しましょう。
交付申請期間を短縮するためにすべきこと
16次・17次・18次共に実績報告書間提出期限は2024年12月10日であり、遅くとも当該期限の3か月前の2024年9月上旬までに申請手続きの完了が必要です。
交付申請の主な差戻し事由は以下の通りです。
- 見積依頼書と見積書の日付の時系列がおかしい
- 見積書の期限切れ
- 導入設備など投資内容の変更
- 見積書と申請内容ファイルの数字が一致していない
- Jグランツ上に複数の申請を立ち上げてしまった
応募申請時から3か月程度時間が経過しているため、より新しい機械設備への変更などを希望される事業者も多くいらっしゃいますが、申請内容の変更に際しては、事務局への事前相談、変更内容を記した書面の提出と審査が必要であり、特に長期化する傾向にありますのでご注意ください。
実績報告期間を短縮するために
補助金入金まであともう少し、というところで実績報告時にも数回の差戻しが発生する場合があります。主な差戻し事由は以下の通りです。
- 必要書類の不足
- 書類に事務局マニュアルに則ったナンバリング加工などがされていない
- 必要な写真が撮られていない
- 経費明細表への転記ミスや内容の不一致
- 経理書類の日付ミス
特に写真撮影は、経費項目により色々な場面の写真が必要になります。
後から撮り直しができないケースもありますので注意しましょう。
地方事務局担当者への事前チェックは細かいやり取りが発生し、時間を要することも多いため、事業完了後は速やかにチェックへ回せるよう、資料は早めに準備しましょう。
各種資料へのリンク
ものづくり補助金では様々な資料が事務局より提供されています。その中でも、特にご確認いただきたい資料を以下にまとめました。
参照するタイミング |
16次 |
17次 |
18次 |
応募申請~ |
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交付申請~ |
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実績報告~ |
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事業化状況報告~ |
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おわりに
以上、ものづくり補助金の採択後の手続きについて解説しました。ものづくり補助金では、採択後も補助金入金までに複数の工程・審査があります。また、応募申請時の事業計画書の内容に沿って実施する必要があるため、応募申請段階から詳細に事業計画を策定し、経費の取り残しがないように内容を網羅することが求められます。
株式会社壱市コンサルティングでは、中小企業診断士のチームで事業再構築補助金の申請サポートを実施しております。
専門分野をもった、中小企業診断士のメンバーが揃っており、各業界に適した人材が2~3名体制で責任をもって担当します。
次回第19次以降のものづくり補助金の申請をご検討の方は、是非お問い合わせください。
第17次、第18次までで1度不採択となってしまった事業者の方には、他の補助金への申請も含めて、ご支援いたします。